専攻科とは

専攻科のある学校

「専攻科」とは、学校教育法第1条に規定される学校(一条校)のうち、高等学校・中等教育学校・大学(短期大学を含む)・高等専門学校といった教育機関に設置することが可能なものです。

対象者は、当該種の学校を卒業もしくはそれと同等以上の学力を有する者などで、「精深な程度において、特別の事項を教授し、その研究を指導すること」を目的とし、1年以上の修業年限を設定しています。

特別支援学校においては、学校教育法第58条における高等学校での専攻科・別科に関する設置条項に基づき、同法第82条の準用規定によって高等部に設置することが可能です。
統計上、専攻科に進むことは「進学」として扱われますが、法的には高等部より上級の教育階梯ではなく、本科とともに同じ後期中等教育という教育階梯における継続教育機関として位置づけられます。

文部科学省の統計の上では、特別支援学校における専攻科の設置校数の数は明らかではありません。以前より、視覚障害(盲学校)や聴覚障害(聾学校)の専攻科は知られていますが、その多くは職業学科の形で設置されていました。その他の障害種を対象とした特別支援学校では、知的障害を対象とした学校で、2023年度時点で10校が専攻科を設置しています。このうち、1校は国立大学法人の附属校、残り9校は学校法人(私立)が設置者であり、知的障害を対象とした公立校の専攻科は存在していません。

この他、知的障害を対象とした学科に専攻科を設けている私立高等学校や、専攻科の設置規定がない高等専修学校に置かれている例、そしてフリースクールの無認可高校など法的根拠に関わらず、「専攻科」の名称を用いて継続教育を行っている学校・教育機関が存在します。また、専攻科を修了した後の教育階梯として、独自に「研修科」を設けている例もあります。

福祉制度を活用する形での取り組み

特別支援学校高等部に専攻科を置く例は上記の通りですが、教育年限延長のニーズを叶える場としての専攻科の設置を求める声を受け、障害福祉サービスを活用した形の取り組みが始まりました。

2008年、和歌山県田辺市の社会福祉法人が、障害者総合支援法(当時は障害者自立支援法)における「自立訓練(生活訓練)」事業を活用し、福祉版の専攻科ともいえる「学びの作業所」の取り組みを始めると、そのアイデアは各地に広がっていきました。そのなかで生み出された表現が、「福祉事業型専攻科」という言葉です。

本来ならば、学校に専攻科が設置されることを望みつつも、その日を待つことができないなかで生み出された福祉による「専攻科」は、学校教育制度のもとでの専攻科とは異なる点が多々あります。制度に基づく学校の専攻科設置を求める過程で、それに代わる暫定的な取り組みとして福祉型専攻科を位置づける見方があれば、今の学校では難しい実践が福祉の場であれば可能なことを生かす形で、福祉型専攻科の独自性を追求する見方もあります。

 

参考文献:國本真吾「高等部専攻科と福祉事業型専攻科」玉村公二彦他編著『新版キーワードブック特別支援教育』クリエイツかもがわ